海の短歌、7月22日は海の日です。暑い季節には格好の遊び場ですが、一年を通じて海の美しさは変わることがありません。
きょうの日めくり短歌は「海の日」にちなみ、海が詠まれた短歌をご紹介します。
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海の短歌
山や川、海や湖などの、自然の風物は、長い歴史の中で繰り返し短歌に詠まれてきました。
その中でも、海を詠んだ短歌は印象に残るものがたくさんあります。
島国の日本は多くの歌人が海に面し、変わらないその姿と海にまつわる感慨を歌の中に書きとどめています。
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箱根路をわが越えくれば伊豆の海や沖の小島に波の寄る見ゆ
作者:源実朝
源実朝の代表作品の一首。目の前に開けるすがしい海の景色を詠んでいます。
他に、
「世の中は常にもがもな渚漕ぐ海人の小舟の綱手かなしも 」
も有名。
わたのはら漕ぎ出でて見ればひさかたの雲居にまがふ沖つ白波
百人一首76番。
作者は 法性寺入道前関白太政大臣。 藤原忠通。
百人一首でははっきりと海を詠んだ歌はこのくらいしかありません。
海上の船の上から見る、大空の雲と波。スケールの大きな作品です。
海恋し潮の遠鳴りかぞえては少女となりし父母の家
作者:与謝野晶子
与謝野晶子は海の近くで育ったのでしょう。子どもの時の思い出が海と結びついているのですね。
東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる
作者:石川啄木
啄木の歌集「一握の砂」冒頭に置かれた作品。「東海の小島」として詠まれたのはどこの海なのかは、今でも様々に議論が重ねられています。
「東海」は、斎藤茂吉も使っていますが、広い範囲の海を指すため、限定が難しいのです。
寂しさに海を覗けばあはれあはれ章魚(たこ)逃げてゆく真昼の光
作者:北原白秋
三崎海岸の海は、姦通事件で投獄された北原白秋を癒し、再生に導きました。
小さな生き物へのあたたかなまなざしも、海ならではの体験でしょう。
ゆらゆらと朝日子あかくひむがしの海に生まれてゐたりけるかも
作者:斎藤茂吉
「朝日子」とは、朝日、太陽のこと。
「東海の渚に立てば朝日子はわがをとめごの額を照らす」と共に、朝の海辺の光を詠います。
冬の皺よせゐる海よ今少し生きて己れの無惨を見むか
作者は中城ふみ子。『乳房喪失』の中の代表的な一首となります。
ガンを病んでいた作者は、自らの命の短さを、「今少し」と表現しているのです。
「冬の皺よせゐる海」の季節とダイナミズムが、状況の厳しさを支えています。
マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや
作者:寺山修司
寺山の代表作品として有名な歌。映画の一場面のような光景にニヒリズムが満ちています。
この「海」は、明るい夏の意味ではありませんが、効果的です。
海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手を広げていたり
作者:寺山修司
寺山修司の初期崎品の特徴は、いわゆる”青春”を高らかに歌う点にありますが、この歌もみずみずしい感性が美しい歌です。
きょうの日めくり短歌は、海の日にちなみ、海の短歌をご紹介しました。
それではまた!
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