万葉集

石見相聞歌の解説 表現技法と品詞分解 万葉集 柿本人麻呂

石見相聞歌は柿本人麻呂の代表作の和歌です。

石見相聞歌の意味と現代語約表現技法と品詞分解の解説と鑑賞を記します。

石見相聞歌とは

石見(いわみ)相聞歌は万葉集の柿本人麻呂の長歌と反歌2首からなる一連の歌です。

石見というのは「石見国」今の島根県西部(石見地方)の地名からきており、作者人麻呂はそこに妻を葬った、その嘆きを表すものです。

最初の詞書は

「柿本朝臣人麻呂、石見国より妻を別れて登り来るときの歌」

意味は「亡くなった妻と別れて都に帰ってくるそのときに詠まれた歌」というものです。

この記事では長歌部分の解説をします。

※万葉集全体については

万葉集とは 基礎知識まとめ

万葉集の和歌一覧まとめと解説 現代語訳付き

 

石見相聞歌の長歌

以下に長歌を示します。

石見(いはみ)の海(うみ) 角(つの)の浦廻(うらみ)を 浦なしと 人こそ見らめ 潟(かた)なしと 人こそ見らめ よしゑやし 浦はなくとも よしゑやし 潟はなくとも いさなとり 海辺(へ)を指して にきたづの 荒磯(ありそ)の上に か青く生ふる浪のむた か寄りかく寄る 玉藻なす 寄せ寝し妹を 露霜(つゆしも)の 置きてし来(く)れば この道の 八十隈毎(やそくまごと)に 万(よろづ)たび かへりみすれど いや遠(とほ)に 里は放(さか)りぬ いや高に 山も越え来ぬ 夏草の 思ひしなえて 偲(しの)ふらむ 妹(いも)が門(かど)見む 靡(なび)けこの山

 

作者

柿本人麻呂 かきもとのひとまろ

柿本人麻呂の万葉集の和歌代表作一覧

出典

万葉集 第2 相聞 131

現代語訳と意味

この意味の現代語訳は下の通り

石見の海の津野の海岸を、浦がないと人は見るだろう。潟がないと人は見るだろうが、えいままよ 浦はなくても えいままよ 潟は海辺を目指して にきたづの荒磯のあたりに青々と生い茂る 玉藻沖の藻は 朝吹き付ける風が寄せるだろう 夕方押し寄せる 波で寄ってこよう その波と一緒にあちこちよよる 玉藻のように 寄り添ってネタ妻を 置いてきたので この道の 曲り目ごとに 軟便も振り返ってみるが いよいよ遠く 里は遠のいてしまった いよいよ高く山も越えてきた 思いしおれて わたしを偲んでいることであろう妻の家の門を見たいものだ 平たくなれこの山よ

 

語句の解説

  • 人こそ見らめ・・・「人は見るだろうが」「こそ・・・らめ」は係り結びで下につながる
    「らめ」の基本形「らむ」だが、ここは連用形に接続している上代の特殊な例となる
  • よしえやし・・・「ええ ままよ」の上代の副詞。
    上代の副詞「よし」+上代の詠嘆の関東女子「え」で「え」は「よし」を強調する
  • か青く・・・「か「は接頭語 形容詞や動詞に接続して語調を整える 青々と
  • 沖つ藻・・・沖の藻 「つ」は連体修飾語を作る状態の格助詞
  • かよりかくよる・・・あっちへ寄ったりこっちへ寄ったり」の意味
  • 妹・・・読みは「いも」。男性から女子絵を親しんで呼ぶ語で「妻」の意味
  • 置きてし暮れば・・・「置いてきてしまったので」の意味。
    「し」は強意の副助詞
  • 離(坂)りぬ・・・離れてしまった 「ぬ」は完了の助動詞
  • 思ひしなえて・・・思いしおれて
    「しなゆ」は元気なくしょんぼりする様子を表す



 

品詞分解

全体の品詞分解は以下の通り

石見の海 角-格助浦廻-格助 浦なしク-終

こそ-係助 -上一用らめ 潟なしク-終と 人こそ-係助詞-上一用らめ よし-やし-間助

浦は無くク-用とも-接助 よし-やし-間助 潟は無く-ク-用とも-接助 いさなとり-枕

海辺-格助 指し-四用て にきたづ-格助 荒磯-格助-格助 か青く-ク-用 生ふる-上二体

玉藻沖-格助藻 朝羽振る-四・体 風こそ-係助寄せ-下二・用 -助動詞・推・未然

夕はふる-四・体 浪こそ-係助来寄-四・已 浪の-格助むた -寄り-四・用かく-寄る -四・体 

玉藻なす-四・体  寄り寝-下二・用-助動詞・過・体-格助 露霜の-枕  置き-四・用 -助動詞・完・用-副助来れ-カ変・已-格助 -代-格助-格助

八十隈毎-格助 万たび-副 かへり見すれ-サ変・已-接助 いや-遠に- 里-係助離り-四・用-助動・完・終

いや-高に- 山-係助越え来-カ変・用-助動・完・終 夏草の-枕  思ひしなえ-下二・用 偲ふ-四・終らむ-助動詞・現推・体 妹-格助-上一・未-助動詞・意・終 靡け-四・命-代-格助

 

石見相聞歌の表現技法

この歌の表現技法には複数の枕詞、係り結び、序詞、体言止めが用いられている。

枕詞の箇所

  • いさなとり・・・「海」「浜」の枕詞
  • 露霜の・・・「置き」の枕詞
  • 夏草の・・・「しなゆ」の枕詞

 

序詞

冒頭「石見の海・・・玉藻なす」までが「寄り寝」を導く序詞

体言止め

なびけこの山の「山」が名詞。



石見相聞歌 長歌の鑑賞

広大な石見の海から景物を交えながら焦点を絞り込み、玉藻のように美しい妻を描く。

波間に漂う藻のように、自分に寄り添って寝た妻を思い出し、その妻が亡くなったことを「遠く隔たる」と表し、離れた妻が自分をしたって「思いしおれているだろう」と表現する。

そのつまへの痛切な思いが、最後の「なびけこの山」という山に向かっての叫びとして表現されている。

反歌2首

この長歌の反歌は

石見のや高角山の木の間より我が振る袖を妹みつらむか

笹の葉はみ山もさやにさやげども我は妹思ふ別れ来ぬれば

上の歌の解説

万葉集,和歌,解説
石見のや高角山の木の間より我が振る袖を妹みつらむか 柿本人麻呂

石見のや高角山の木の間より我が振る袖を妹みつらむか 柿本人麻呂作の万葉集の和歌の代表作品「石見相聞歌」の反歌の現代語訳、句切れや語句、品詞分解を解説、鑑賞します。 スポンサーリンク

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参考:石見国の場所

島根県西部(石見地方)の高角山公園には人麻呂の歌碑がある。

柿本人麻呂について

柿本人麻呂 (かきのもとのひとまろ)

飛鳥時代の歌人。生没年未詳。7世紀後半、持統天皇・文武天皇の両天皇に仕え、官位は低かったが宮廷詩人として活躍したと考えられる。日並皇子、高市皇子の舎人(とねり)ともいう。

「万葉集」に長歌16,短歌63首のほか「人麻呂歌集に出づ」として約370首の歌があるが、人麻呂作ではないものが含まれているものもある。長歌、短歌いずれにもすぐれた歌人として、紀貫之も古今集の仮名序にも取り上げられている。古来歌聖として仰がれている。

 

柿本人麻呂の代表作

東の野に炎の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ

磯城島の大和の国は言霊の助くる国ぞま幸くありこそ

大君は神にしませば天雲の雷の上に廬せるかも

あしひきの山川の瀬の響るなへに弓月が嶽に雲立ち渡る

近江の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのに古思ほゆ

天離る鄙の長道ゆ恋ひ来れば明石の門より大和島見ゆ

もののふの八十宇治川の網代木にいさよふ波の行く方知らずも

秋山の黄葉を茂み迷ひぬる妹を求めぬ山道知らずも

衾道を引手の山に妹を置きて山道を行けば生けりともなし

 

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