見まく欲り思ひしなへにかづらかけかぐはし君を相見つるかも
大伴家持の万葉集の和歌で「かぐはし」と「かづら」を詠み込んだ和歌、作品の現代語訳、句切れと語句などを解説します。
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読み:みまくほり おもいしなえに かずらかけ かぐわしきみを あいみつるかも
作者と出典
大伴家持 『万葉集』 巻18-4120
歌の意味と現代語訳
逢いたいと思っていた折から かずら飾りの美しいあなたにお会いできました。
句切れ
句切れなし
語の意味と表現技法など
- 見まく欲り…「見まく」は「見む」のク語法
- 「欲り」…基本形「欲る」の連用形 意味は「願う」
- 思ひしなへに…「なへ」の読みは「なえ」。意味は「~しているところへちょうど」
- かづらかげ…「かづら」は頭に乗せる輪状の髪飾りのこと。「かげ」は冠や笠などの頭の上に置くものをいう
解説と解釈
大伴家持作の、「京に向かはむ時に、貴人を見また美人に逢ひ飲宴せむ日のために、懐(おもひ)を述べ儲(ま)けて作る歌2首」一連2首の中の最初の歌。
詞書を訳すと「京で逢うときのために、予め思いを述べておく」という歌であって、知人のことを思い家持が作った歌と思われる。
「貴人」は左大臣橘諸兄(さだいじんたちばなのもろえ)のことであるといわれる。
「かづらかげ」は、頭の上に置く飾りで、おそらく正装のときの立派な様子だが、「かぐはし君」(美しく立派な君)の枕詞的な用法で、「正装した立派な君」という君を賛嘆するための言葉であろう。
「かぐわし」は元は、「香りが良い」との意味であったが、そこから広く「美しい」との意味で用いられるようになった語である。
この2首目は
朝参の君が姿を見ず久に鄙にし住めば我恋りにけり
で、上句は「はしきよし妹が姿を」は、上京先の宴会の出席者に女性がいれば、この歌の上句を「はしきよし妹が姿を」にする意図であったようである。
この「妹」は特定の人物ではなく、また、詞書にある「美人」に当たり、男性と女性と両方に向けての親愛の気持ちを表す歌として家持が用意したと思われる。