俵万智さんの第六歌集『未来のサイズ』が刊行されました。
きょうの日めくり短歌は、俵万智さんの『未来のサイズ』の短歌を紹介します。
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畑よりくっきり虹が生えている虹の根元を掘りにいこうか
作者:俵万智 第六歌集『未来のサイズ』より
冒頭の歌は、石垣島に住んで、広々とした畑にかかる虹を詠んだ短歌です。
俵万智『未来のサイズ』が刊行
俵万智さんの新しい歌集「未来のサイズ」が発売されました。2020年までの8年間を詠んだ418首の第6歌集です。
テーマは最近ではコロナ禍、それ以前の石垣島や宮崎での暮らし、そして変化する子どもとの関わりが詠まれています。
赤レンガの屋根に上りて子は雲と話し続けるおーい、おおーい
私としてはやはり子どもである息子さんを詠ったものが一番好きです。
「オレが今マリオなんだよ」島に来て子はゲーム機に触れなくなりぬ
その前の第五歌集「俺がマリオ」のタイトルにもなった歌。
この島というのが石垣島で、その後は、進学のために島を離れることになりました。
島に来て島の子となり卒業すさよなら崎枝小中学校
この歌を見るとおのずから、ベストセラーとなった「サラダ記念日」の
万智ちゃんを先生と呼ぶ子らがいて神奈川県立橋本高校
を思い出しますね。
息子さんはその後、全寮制の中高学校に入学。
ふいうちでくる涙あり小学校下校の群れとすれ違うとき
日に四度電話をかけてくる日あり息子の声を嗅ぐように聴く
あす会えるあした会えると思うとき子を産む前の夜を思い出す
これらは私が一番好きな作品です。
今回の「未来のサイズ」の表紙にもある
手伝ってくれる息子がいることの幸せ包む餃子の時間
こういうちょっとひねった、というか工夫のある歌が俵万智さんの作品の特徴でもあります。
クッキーのように焼かれている心みんな『いいね』に型抜きされて
社会風俗を取り入れた歌。この『いいね』はツイッターのハートマークのことでしょう。
画一化された現代社会への批判のようなものもあるのかもしれません。
コロナ禍を詠んだ短歌
感染者二桁に減り良い方のニュースにカウントされる人たち
朝ごとの検温をして二週間前の自分を確かめている
歌集の最初の章にあるのがコロナ禍を詠んだ短歌です。
俵万智さんの作品は、ずっと時系列的に続いているので、息子さんの成長を含め、この先もどうなるのかが楽しみですね。
きょうの日めくり短歌は、俵万智さんの新しい歌集『未来のサイズ』の短歌をご紹介しました。
俵万智プロフィール
俵万智(たわらまち)1962年大阪府門真市生まれ。
早稲田大学在学中より短歌を始める。佐佐木幸綱に師事。「心の花」所属。1987年、第一歌集『サラダ記念日』(河出書房新社)を出版、260万部を越えるベストセラーになり、第32回現代歌人協会賞受賞。歌集のほか、小説『トリアングル』、エッセイ『あなたと読む恋の歌百首』『百人一酒』など著書多数。
俵万智の他の短歌
俵万智の他の短歌の代表作です。
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