万葉集・古今集・新古今集の違い 歌風の特徴他  

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万葉集・古今集・新古今集の違い 歌風の特徴他

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万葉集、古今集、新古今集は、日本の三大歌集と呼ばれています。

万葉集、古今集、新古今集の時代比較、作者や歌人、代表作和歌、それぞれの歌集の歌風の違いについてお知らせします。

万葉集・古今集・新古今集の時代と成立

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万葉集、古今集、新古今集は日本の三大歌集で、それぞれの歌集の特徴を比較することで理解が深まります。

三大歌集を様々な項目別にその違いを見ていきましょう。

和歌の解説記事まとめ

三大歌集と似た呼び名に「三代集」という分類があります。

三代集と八代集については下の記事で確認できます。

和歌集の一覧まとめ 三代集・八代集解説

 

歌集の成立した時代

歌集の年代の比較です。

古い順に万葉集・古今集・新古今集と並べられます。

歌集名 時代 年代 世紀
万葉集 飛鳥時代~奈良時代 629-759年 7世紀後半から8世紀後半
古今集 平安時代 905年頃 10世紀
新古今集 鎌倉時代 1201-1221年 13世紀

万葉集は平城京があった時代です。

古今集はそのあと、藤原氏や平氏、源氏一門が活躍した頃の時代です。

新古今集は源平の壇ノ浦の戦いのあと、源頼朝の時代で鎌倉に大仏ができたのもその頃です。

同じ昔のことであっても、人々の文化や生活は大きく発展し、それと共に和歌も複雑になっていったのです。

 

歌集の成立と理由

万葉集との大きな違いは、他の2つの歌集は勅撰歌集だという点です。

勅撰歌集とは、天皇や上皇の命により編纂された歌集のことです。

万葉集は勅撰歌集ではなく、成立の背景はよくわかっていません。

歌集名 天皇の関与 命じた人
万葉集 天皇の命令はない
古今集 勅撰歌集 醍醐天皇 885- 930
新古今和歌集 勅撰歌集 後鳥羽院 1180- 1239

八代集とは

万葉集はそれ自体独立した一つの歌集ですが、古今集と新古今和歌集は、どちらも同じ勅撰和歌集という意味で、勅撰和歌集の8つのうちに数えられています。

この勅撰歌集の総称を八代集といいます。

八代集を含めた上で、それぞれの歌集の順番を言うと下のようにまとめられます。

歌集の文学史での位置づけ

歌集名 位置
万葉集 日本最初の歌集
古今集 八代集の最初の歌集
新古今和歌集 八代集の最後の歌集

万葉集は日本最初の和歌集であり、古今集は,八代集の最初、新古今集は八代集の最後の和歌集です。

天皇が歌集を作るように命じたのは、鎌倉時代の新古今集が最後です。

それ以降の時代は、和歌の意義や、文化的な重要度がそれまでの時代とは異なったものとなっていきました。

 

万葉集・古今集・新古今集の和歌について

ここからは収録されている和歌についての対照です。

歌集の和歌の数

三大歌集の収録歌数です。

歌集名 巻数 歌数
万葉集 全20巻 約4,500首
古今集 全20巻 約1,111首
新古今和歌集 全20巻 約1,970首

万葉集の収録歌数は三大歌集の中でもたいへんに多いですが、これは一人ではなく複数の人物によって長い年数をかけてまとめられと考えています。

 

万葉集・古今集・新古今集の文字表記

歌集名 表記
万葉集 万葉仮名(漢字)
古今集 かな文字主体
新古今集 ひらがなと漢字

万葉集の時代には、まだひらがながなかったので、漢字に音を当てる万葉仮名というもので記されていました。

万葉仮名の例文:

万葉仮名:春過而 夏来良之 白妙能 衣乾有 天之香来山

今の書き方:春過ぎて夏きたるらし白妙の衣干したり天の香具山

万葉仮名の例は上の通りです。

今読める万葉集の歌の表記は、「春過而 夏来良之」と書かれたものを「春過ぎて」と今の言葉で書き直したものです。

なので、本によっては漢字への置き換えが違っているものもあります。

歌集別の表記の違い

また、万葉仮名はそのあとの時代には使われなかったので、その後研究されて読み方がわかったものです。

一部にはどうしてもよくわからないというものも含まれており、読みがわからないまま推測で鑑賞されている歌も含まれています。

古今集以後は今の読み方や書き方と表記は基本的には々ですが、万葉集は表記の点からもやはり古い時代の歌集といえます。

 

万葉集・古今集・新古今集の撰者と作者について

歌集に収録する歌を集めたり選んだりするのが撰者の役割です。

各歌集の撰者、それと歌を詠んだ人がどのような人たちだったかについてまとめます。

歌集の撰者

歌集の撰者はそれぞれ下のようになっています。

歌集名 代表者 撰者
万葉集 大伴家持 注:編纂に関わったうちの一人と考えられている
古今集 紀貫之 紀友則 凡河内躬恒 壬生忠岑
新古今集 藤原定家 源通具・六条有家・藤原家隆・飛鳥井雅経・寂蓮

紀貫之は古今集の序文「仮名序」を記した人です。

古今集序文の作者

古今集と新古今集には、それぞれ「仮名序」と「真名序」という序文がついています。

序文名称 文章の種類 書いた人
仮名序 和文 紀貫之
真名序 漢文 紀淑望

 

※紀貫之が「仮名序」で上げた優れた歌人の6名が、六歌仙です。

六歌仙とは 現代語訳付き解説

仮名序の意味と内容解説 古今和歌集の紀貫之の序文

 

新古今集の序文の作者

序文名称 文章の種類 書いた人
真名序 漢文 藤原親経
仮名序 和文 藤原良経

新古今集の序文は、歌集の編纂を命じた後鳥羽院に成り代わって記されました。

 

万葉集・古今集・新古今集の和歌の作者

歌集名 歌数
万葉集 天皇・官人・一般民衆
古今集 天皇・貴族
新古今集 天皇・貴族・僧侶

万葉集の作者について

万葉集の作者はよく「庶民」と言われますが、これには異論があり、誰しもが和歌を詠んだり書いたりしたとは考えられませんで、やはり、身分の高い人に限られるという見方があります。

なお、万葉集での「官人」と呼ばれるのは、天皇に使える朝廷の政治職の人たちです。

 

万葉集・古今集・新古今集の有名な歌人

それぞれの歌集の有名な歌人をあげます。

歌集名 歌数
万葉集 柿本人麻呂 大伴家持 額田王 山部赤人 山上憶良 大伴旅人
古今集 紀貫之 小野小町 在原業平 凡河内躬恒 壬生忠岑
新古今集 藤原定家 式子内親王 藤原俊成 藤原良経 寂漣

それぞれの歌人の代表作については下の記事からご覧ください。

万葉集の代表的な歌人一覧まとめ

古今和歌集とは 作者と作品まとめ

新古今和歌集の代表的な歌人

 

万葉集・古今集・新古今集の歌風の違い

ここからは三代集の歌風の違いについて説明します。

それぞれの特徴を表すキーワードと特徴の具体は下のようになります。

歌集名 呼び方 特徴の具体
万葉集 万葉調 写実的・率直・素朴・雄健
古今集 古今調 観念的・理知的
新古今集 新古今調 「幽玄」「有心」余情の重視 耽美的・浪漫的 象徴的

「幽玄」は藤原俊成の提唱した良い歌の概念です。

幽玄の内容については

幽玄の意味を解説 新古今集藤原俊成の和歌の美

 

万葉集・古今集・新古今集の調べの違い

歌集名 調べ 調べの特徴
万葉集 五七調 力強く雄大・重厚
古今集 七五調 優美で流麗、軽快な調べ
新古今集 七五調 繊細で優雅

万葉集の時代には歌の音調は力強いものでしたが次第に繊細で洗練されたものへ変化していきました。

 

万葉集・古今集・新古今集の修辞の違い

歌集名 特徴の具体
万葉集 序詞・枕詞
古今集 掛詞・縁語 三句切れ 見立て
新古今集 掛詞・縁語 本歌取り 初句切れ三句切れ、体言止めの多用

万葉集の時代に多用された序詞や枕詞は、古今集になると次第に使われなくなりました。

代わりに掛詞や縁語といった、意味と音が文章の流れとは別な関連を持つ、いわば多重に綾を成す言葉の技巧が凝らされるようになります。

本歌取りという歌同士の関連の中で、さらなる効果を狙って技巧を競い合い、三十一文字という限られた字数の中で、互いに競い合ってあらゆる最高の技巧が追及されたのがこの新古今の時代の和歌なのです。

和歌の修辞法をわかりやすく解説

賀茂真淵による歌風の分類

もうひとつ、和歌の研究を進めた賀茂真淵によって、万葉集と古今集の違いを明確にするべく名づけたものが「ますらをぶり」と「たをやめぶり」の言葉です。

歌集名 歌数 意味
万葉集 ますらをぶり 力強い男性とのたとえ
古今集 たをやめぶり 優美な女性とのたとえ

「ますらを」というのは立派な男性を指す万葉の言葉で、女性である「たをやめ」と対照させて、それぞれの歌集の特性を言い表しています。

賀茂真淵の各定義と解説は下の記事をお読みください。

「ますらをぶり」と「たをやめぶり」賀茂真淵のいう意味と作品例

 

万葉集・古今集・新古今集の代表作和歌

それぞれの歌集の代表作は以下の記事で読めます。

万葉集の代表作和歌

東の野に炎の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ  柿本人麻呂

君待つと我が恋ひ居れば我が宿の簾動かし秋の風吹く 額田王

田子の浦ゆうち出でてみればま白にぞ富士の高嶺に雪は降りつつ 山部赤人

 

万葉集の代表作和歌はこちらにまとめました。

万葉集の代表作和歌20首

古今集の代表作和歌

人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける 紀貫之

から衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬるたびをしぞ思ふ 在原業平

思ひつつ寝ればや​人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを 小野小町

 

古今集の代表作和歌はこちらにまとめました。

 古今和歌集の代表作品一覧 読んでおきたい有名20首

新古今集の代表作和歌

こぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くやもしほの身もこがれつつ 藤原定家

玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする 式子内親王

心なき身にもあはれは知られけりしぎ立つ沢の秋の夕暮れ 西行

 

新古今集の代表作和歌はこちらにまとめました。

新古今和歌集の代表作品一覧 これだけは読みたい有名20首

まとめ

以上、万葉集と古今集、続く新古今集の違いをコンパクトにまとめました。

詳細についてはリンク先の各記事をご覧ください。




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