新古今和歌集の代表的な歌人は、どのような人たちでしょうか。
新古今和歌集の代表的な歌人と代表作を一覧にまとめます。
新古今和歌集とは
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新古今和歌集とは、鎌倉時代に後鳥羽院(ごとばいん)が編纂させた勅撰和歌集です。
勅撰和歌集とは、天皇や上皇の命により編纂された歌集です。
ここに選ばれた作品は、いずれも、選りすぐったものが選ばれたわけですが、その中でも特に優れた代表的な歌人とその作品を記します。
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新古今和歌集の撰者
まずは、新古今和歌集の編纂に選ばれた人たち、歌を選ぶ撰者(せんじゃ)は下の歌人たちでした。
- 源通具
- 藤原有家
- 藤原定家
- 藤原家隆
- 藤原雅経
- 寂連
このうちもっとも有名なのが、藤原定家(ふじわら の さだいえ/ていか)、それと、寂連(じゃくれん)だと思われます。
藤原定家と寂連、それと編纂を命じた後鳥羽院も、新古今集の代表的な歌人といえます。
藤原定家と寂連のそれぞれの代表作をあげます。解説ページのあるものは、詳しい解説もご覧ください。
藤原定家
藤原定家は、古典を代表する大変優れた歌人の一人です。
※藤原定家の一覧は
藤原定家の和歌一覧 代表作と有名な作品
藤原定家の代表作品の和歌
見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ
現代語訳:あたりを見渡すと、桜の花はもとより、紅葉の彩りすら目に触れないのだよ。漁師の仮小屋の散らばる浦の秋の夕暮れは
新古今和歌集の「三夕の歌」としてたいへん有名な作品です。
春の夜の夢の浮橋とだえして峰に別るる横雲の空
現代語訳:春の夜の、浮橋のようなはかなく短い夢から目が覚めたとき、山の峰に吹き付けられた横雲が、左右に別れて明け方の空に流れてゆくことだ
夢を見る心と、現実の空がつながっているような優れた表現が見られる歌です。
他に
梅の花にほひをうつす袖の上に軒もる月の影ぞあらそふ 藤原定家
駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮れ 藤原定家
帰るさのものとや人のながむらん待つ夜ながらの有明の月 藤原定家
寂蓮
寂連は僧侶、俗名は藤原定長、藤原俊成の甥にあたります。
寂蓮の代表作品の和歌
寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ
現代語訳:
この寂しさは特にどこからというのわけでもないことだ、真木の甥裁つ山の秋の夕暮れよ
この歌は藤原定家によって、百人一首にも選ばれています。
寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ 寂蓮法師
新古今和歌集の代表的な歌人
ほかに、代表的な歌人としては
- 西行
- 慈円
- 藤原良経
- 藤原俊成
- 式子内親王
などがあげられます。
以下は、それぞれの代表作品をあげます。
西行
西行は、出家した僧侶で、西行法師とも呼ばれます。
西行の作品は、全部で2200首になるとされ、百人一首にも選ばれています。
西行の代表作品の和歌
道の辺に清水流るる柳陰しばしとてこそ立ちどまりつれ
現代語訳:
道のほとりに清水が流れている、そのそばの柳の木陰よ、ほんのちょっとと思って立ち止まったのであるが
この歌に詠まれる柳は、西行の「遊行柳」と言われ、今もその場所が残っているくらい、古くから優れた歌人として親しまれています。
西行の関連記事:
道の辺に清水流るる柳陰しばしとてこそ立ちどまりつれ 西行法師【新古今】
心なき身にもあはれは知られけりしぎ立つ沢の秋の夕暮れ 西行【新古今集】
慈円
いつかわれみ山の里の寂しきにあるじとなりて人に問はれむ
現代語訳:
いつかわたしは山深い里の寂しいところに住み、草庵の主となって人に訪問される暮らしがしたいものだ
慈円(じえん)は鎌倉時代初期の天台宗の僧で、この歌では僧侶の住まいである、草庵に住みたい願いを詠んでいます。
藤原俊成
藤原俊成(ふじわらのとしなり/しゅんぜい)は、藤原定家の父、短歌の「幽玄」を提唱、指導者としても新古今歌風形成に大きな役割を果たしました。
藤原俊成の代表作品の和歌
夕されば野辺の秋風身にしみて鶉鳴くなり深草の里
現代語訳:
夕方になると野原を吹く秋風が身に染みて、鶉が鳴いている。この深草の里には
他に、「またや見む交野のみ野のさくらがり花の雪ちる春のあけぼの」も知られています。
藤原良経
藤原良経は、新古今集の仮名序を執筆し、以下の歌で巻頭歌作者となっています。
み吉野は山もかすみて白雪のふりにし里に春は来にけり
現代語訳:
吉野は、春霞に山も霞むようになり、白雪の降っていたこのこの里にも春が訪れたのだなあ
他に、
うたたねのはかなき夢の中にだに千千の思ひはありけるものを
式子内親王
式子内親王(しょくし/しきしないしんのう)は、鎌倉時代の代表的な女流歌人で、賀茂斎院(さいいん)として、神社で神に奉仕する生活を送りました。
そのため生涯独身でしたが、たいへんすぐれた恋歌をたくさん残しており、百人一首にも選ばれています。
式子内親王の代表作
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする
現代語訳:
わたしの命よ。絶えてしまうというなら絶えてしまっておくれ。生きつづけていたならば、恋心を秘めている力が弱って、秘めきれなくなるかもしれないので
百人一首に選ばれた有名な歌です。
死んでしまってもいいという恋の苦しい心境は、恋歌の極みの一つでしょう。
忘れてはうち嘆かるる夕べかな我のみ知りて過ぐる月日を
現代語訳:
私のしのぶ思いをあの方には告げないで、私一人の胸にしまったまま過ぎてきたこの月日であるものを
式子内親王の和歌は、恋の苦しみを詠ったものだけで、相手にではなく、自分に語り掛けるようなものが多いのです。
他にも
以上、新古今和歌集の代表的な歌人と、その代表作をご紹介しました。
古典、古い言葉の歌は、なかなか一度では良さがわかりにくいかもしれません。
何度も読んで味わってみてくださいね。引き続き鑑賞していきましょう。
古今和歌集と新古今和歌集の代表作品 仮名序・六歌仙・幽玄解説