9月の短歌・和歌【有名20首】  

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9月の短歌・和歌【有名20首】

2022年9月3日

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9月は秋の気配を感じる季節。9月の短歌・和歌の有名な作品と9月の各記念日にちなんだ短歌をご紹介します。

9月の有名な短歌

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9月は暑さの中にも秋の気配を感じる季節。

9月も後半になれば、秋めいた気候の中に見られる事物に季節の移ろいをはっきりと感じ取れるようになります。

紅葉の美しさ、秋風、季節の変化にともなう憂いや寂しさを多く感じる秋は、多くの詩歌が生まれやすい季節といえます。

古くからの和歌と短歌に詠まれた9月の短歌をご紹介します。

9月に鑑賞したい秋の風景を詠んだ有名な短歌からご紹介します。

10月の短歌・和歌【有名20首】

他にも

 

9月の万葉集の短歌

まずは万葉集から、本格的な秋に至る前の9月らしい短歌をご紹介します。

秋の日の穂田を雁がね暗けくに夜のほどろにも鳴き渡るかも

(現代語訳)秋の日の穂田を刈るのではないが、その雁が暗いのに夜明け近くに鳴き渡っているよ

こちらは聖武天皇の1539の歌。

稲刈りの「刈り」と「雁」をかけているのです。

※この歌の詳しい解説

秋の日の穂田を雁がね暗けくに夜のほどろにも鳴き渡るかも 聖武天皇

 

庭草に村雨降りてこほろぎの鳴く声聞けば秋づきにけり

(現代語訳)通り雨の村雨が降ったら、蟋蟀が鳴き始めた声が聞こえて、そうなるとすっかり秋めいてきたのだなあ

万葉集 巻10 2160 作者未詳の歌。

雨で涼しくなった空気を感じながら、秋の訪れを実感するという内容です。

「秋づく」は秋らしくなったという意味で、本格的な秋になる前の段階の気づきを伝えています。

 

秋の野に咲きたる花を指折り(およびをり)かき数ふれば七種(ななくさ)の花

(現代語訳)秋の野原に咲いた数々の花を、指を追って数えると7種類であるよ

万葉集 巻8 1537 山上憶良

有名な秋の七草の歌です。

この一つ後の歌は、「萩の花尾花葛花(くずはな)なでしこの花おみなえしまた藤袴(ふじばかま)朝顔の花」秋の七草を並べています。

詳しい解説は個別ページに
秋の七草は万葉集の山上憶良の短歌 「秋の野の花を詠む歌」

 

君待つと我が恋ひ居れば我が宿の簾動かし秋の風吹く

(現代語訳)あなたを待って恋しく思っていたら、あなたと見まごうかのように私の家の簾を動かして秋風が吹くのです

万葉集 額田王作の有名な歌

額田王の代表作の一つです。

この風は季節的に「秋風」がぴったりですね。

関連記事:
君待つと我が恋ひ居れば我が宿の簾動かし秋の風吹く 額田王

あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る/額田王の有名な問答歌

 

黄葉の過ぎにし子らと携はり遊びし礒を見れば悲しも

(現代語訳)黄葉が散り過ぎるように逝った妻とかつて手を取り合い遊んだこの黒江の磯は、ただ見るだけで悲しいことよ

万葉集 1796 柿本人麻呂作

読みは「もみちばの すぎにしこらと たづさはり あそびしいそを みればかなしも」

万葉集の紅葉は「黄葉」と書かれます。妻の挽歌ですが季節的にも秋になぞらえるのがふさわしいですね。

関連記事:
紅葉・黄葉の名作短歌・和歌 万葉集、百人一首より

 

秋風の吹きにし日よりいつしかと我が待ち恋ひし君ぞ来ませる

(現代語訳)秋風の吹いた日からいつかいつかと、私が恋いしく待っていた君がいらしゃった

「万葉集」巻八の山上憶良の歌。

到来した秋の風のさわやかさと、慕う相手とを並置しています。

秋風が初めて吹いた日のことなので、9月の和歌にふさわしいでしょう。

 

今よりは秋風寒く吹きなむをいかにかひとり長き夜を寝む

(現代語訳)これからは秋風が寒く吹く季節になるが、そんな秋の長い夜を一人で過ごすのはつらいことだ

作者は大伴家持。

妻を亡くした寂しい気持ちを、「秋風が寒い」ことと重ねて表し、秋の夜長につなげています。

万葉集の和歌はこちらから。

万葉集の和歌一覧まとめと解説 現代語訳付き

 

9月の古今集の和歌

ここからは古今集の時代の、有名な秋の歌を紹介します。

住の江の松を秋風吹くからに声うちそふる沖つ白波

(現代語訳)住の江の浜の松を秋風が服につれて、その松風の声にさらに声を添え加えるかのような、沖の白波よ

作者 凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)の古今集 360の歌

百人一首にも採られた歌で、松と風と波の取り合わせが絵画的です。

※この歌の詳しい解説は

住の江の松を秋風吹くからに声うちそふる沖つ白波 凡河内躬恒

 

月見ればちぢにものこそ悲しけれわが身一つの秋にはあらねど

(現代語訳)月を見れば、様々に思いが乱れて悲しいものだ。別に私一人のために秋がやってきたというわけでもないのに

作者大江千里の百人一首にも採られた古今集の代表作。

秋の月を詠んだ典型的な三句切れの歌です。

※この短歌の詳しい解説は

月見ればちぢにものこそ悲しけれわが身一つの秋にはあらねど 大江千里

 

 

奥山にもみじ踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき

(現代語訳)山の奥に紅葉の落ち葉を踏み分けながら、鹿の鳴く声を聞く秋はことさらに悲しく思われる

作者は猿丸太夫。古今集215・百人一首5番にも採られた有名な歌です。

鹿の声はメスを詠んでいるのですが、それが自らの孤独に重なるというのです。

※この短歌の詳しい解説は

奥山にもみじ踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき 猿丸太夫

 

秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる

(現代語訳)秋が来たというのは目でははっきりとわからぬが、風の音にふと秋だなと感じされられることだ

作者 藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん)の有名な歌。 169番。

目から耳へと移行することで、秋の「風の音」が強調されます。

※この短歌の詳しい解説は

秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる/藤原敏行朝臣

 

木の間よりもりくる月の影みれば心づくしの秋はきにけり

(現代語訳)木の枝の間から漏れてくる月の光を見ていると、悲しい思いの限りを尽くさせるその秋が来たのだなあ

読み人知らず184。

素直で清澄な歌。「心づくしの秋」にポイントがあります。悲しい秋のことは「悲秋」と呼ばれます。

※この歌の詳しい解説
木の間よりもりくる月の影見れば心づくしの秋は来にけり 古今集

 

わがためにくる秋にしもあらなくに虫の音きけばまづぞかなしき

(現代語訳)私一人のためにくる秋でもないのに、虫の声を聞けば、他の何よりも悲しくなることだ

作者は読み人知らずの186の歌。

上句の「わがため」の秋ではないが」と前置きして、まるで自分の悲しみだけが深まるような、実感の強さをいっています。

 

9月の新古今集の和歌

ここからは新古今集の時代の、有名な秋の歌を紹介します

見わたせば 花も紅葉(もみぢ)もなかりけり 浦の苫屋(とまや)の 秋の夕暮れ

(現代語訳)見渡してみても花も紅葉も見えないことよ。この海辺の苫ぶきの粗末な小屋のあたりの秋の夕暮れの景色には

作者藤原定家の有名な秋の歌。

「なかりけり」に侘び錆に通じる中世の美意識が指摘されており、工夫の見られる歌です。

この短歌の詳しい解説
見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ 藤原定家

 

秋風にたなびく雲のたえ間よりもれいづる月の影のさやけさ

(現代語訳)秋風によって空に細くたなびいている雲の切れ間から、地に差す月の光の清らかさよ

左京大夫顕輔(さきょうだいぶあきすけ)の百人一首79にも採られた新古今集の代表作です。

月の影とは、月光のこと。

風、雲、月の取り合わせによって、月の光が際立ちます。

※この短歌の詳しい解説は

秋風にたなびく雲のたえ間よりもれいづる月の影のさやけさ 左京大夫顕輔

 

寂しさはその色としもなかりけり槙(まき)立つ山の秋の夕暮れ

(現代語訳)この寂しさは特にどこからというのわけでもないことだ、真木の生い立つ山の秋の夕暮れよ

新古今和歌集361の作者寂蓮法師 じゃくれんほうし)の三夕の歌。

「色としもなかりけり」の意味にポイントがあります。

※この短歌の詳しい解説は

寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ 寂蓮法師

 

心なき身にもあはれは知られけりしぎ立つ沢の秋の夕暮れ

(現代語訳)あわれなど解すべくもないわが身にも、今それはよくわかることだ。鴨の飛び立つ沢辺の秋の夕暮れに

新古今和歌集362の作者西行法師(さいぎょうほうし)の三夕の歌。

こちらも地味なセピア色風の風景にしみじみとする僧としての自分を詠んでいます。

※この短歌の詳しい解説は

心なき身にもあはれは知られけりしぎ立つ沢の秋の夕暮れ 西行

 

「九月」を詠み込んだ短歌

ここからは、「九月」を直接詠み込んだ短歌をお知らせします。

 

みづうみの九月の岸の岩代の櫻の梢色づきにけり   与謝野晶子

西のかた朝いかつちのとどろきて九月一日晴れむとすらし  斎藤茂吉

大正十二年九月ついたち国ことごと震亨れりと後世警め  北原白秋

ひとところ九月の夕日よどめるに野の烟突は烟を吐かず  前田夕暮

九月すでにみ雪とぞなる高山のそのいただきに咲ける花かも  窪田空穂

さわやけき九月となりぬ封切のよき活動寫眞も吾れは見なくに  古泉千樫

夏すぎし九月美しく道に踏む青の柳の葉黄の柳の葉 佐藤佐太郎

秋分の日の電車にて床にさす光とともに運ばれて行く 佐藤佐太郎

 

「九月」の別名長月の短歌

今こむと言ひしばかりに長月の明の月を待ちいでつるかな  素性法師

長月のすゑともなればほろほろと落葉する木のなつかしきかな  若山牧水

長月も半ばになりぬ いつまでか かくも幼く打出でずあらむ  石川啄木

繪たくみを歌人とひて長月の月の一夜を物かたりしぬ  ‭伊藤左千夫

長月の旅の霖雨にこやりわる弟を置きて家にかへるも 中村憲吉

葉鶏頭の秀の燃えたちてふる雨の長月の雨のこぼる間はなし 北原白秋

秋の現代短歌はこちらから

秋の短歌 近代・現代短歌から

 

9月の短歌カレンダー

ここからは9月の短歌カレンダーです。

9月の記念日と歌人の忌日、イベントにちなんだ短歌を日別にご紹介します。

9月1日の短歌

9月1日は「震災記念日」です。

大地震(おおない)の焔に燃ゆるありさまを日々にをののきせむ術なしも

作者:斎藤茂吉 関東大震災の短歌 

亡くなりし子の落書きに手が止まるここに確かに君はいたんだ

作者:千葉由紀 『境界線』 東日本大震災の短歌

関連記事:
関東大震災の短歌

震災の短歌「うたをよむ」より 東日本大震災から11年

 

9月2日の短歌

9月2日はくず餅の日です。

くず餅の旗ひるがへす桜風客呼ぶ人の前髪吹くよ

作者:前田夕暮 『はなふぶき』

 

9月3日の短歌

9月3日は歌人の釈迢空の忌日です。

代表作短歌のひとつ

葛の花踏みしだかれて色あたらしこの山道を行きし人あり

解説記事:
葛の花踏みしだかれて色あたらしこの山道を行きし人あり 釈迢空

他に、ホームラン記念日、ドラえもんの誕生日の日、エビアンの日でもあります。

 

9月4日の短歌

9月4日は くしの日 です。

その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな 与謝野晶子

その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな 与謝野晶子

9月5日の短歌

9月5日は 石炭の日 です。

このゆふべわがさ庭べに男来て石炭の殻すてて去りたり : 斎藤茂吉 『あらたま』

9月6日の短歌

9月6日は 在原業平の新暦での忌日(893年9月6日)です。(旧暦では寛平5年7月19日)

ちはやぶる神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは 在原業平

在原業平の代表作和歌5首 作風と特徴

9月8日の短歌

9月8日は 桑の日です。

桑の香の青くただよふ朝明に堪へがたければ母呼びにけり 斎藤茂吉

「桑の日」斎藤茂吉の桑の短歌【日めくり短歌】

9月9日

9月9日は 重陽の節句・菊の節句です。

心あてに折らばや折らむ初霜のおきまどはせる白菊の花 凡河内躬恒

心あてに折らばや折らむ初霜のおきまどはせる白菊の花 凡河内躬恒

9月10日の短歌

9月10日は 下水道の日 です。

暗渠詰まりしかば春暁を奉仕せり噴 泉フォンテーヌ・La Fontaine 塚本邦雄

塚本邦雄の短歌代表作5首

 

9月11日の短歌

9月11日は 三条右大臣 藤原定方の新暦での忌日です。 (旧暦承平2年8月4日)

名にし負はば逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな 三条右大臣

百人一首の和歌 全百首と解説ページ

 

9月12日の短歌

9月12日は マラソンの日です。

身はすでに雄(を)のかまいたち喨々(りょうりょう)と風にさからふ耳尖りくる 岡野弘彦

マラソンの日の短歌 岡野弘彦【日めくり短歌】

 

9月14日の短歌

9月14日は コスモスの日です。

大空の青きとばりによりそひて人を思へるこすもすの花 与謝野晶子

コスモス・秋桜の花短歌 与謝野晶子、斎藤茂吉他 

9月15日の短歌

9月15日は ひじきの日です。

思ひあらばむぐらの宿に寝もしなむひじきものには袖をしつつも

在原業平の代表作和歌5首 作風と特徴

9月16日の短歌

9月16日は マッチの日です。

マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや  寺山修司

寺山修司の短歌代表作品一覧

9月17日の短歌

9月17日は 牧水忌です。

白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ

若山牧水の代表作短歌10首 愛唱される作品を紹介!

9月18日の短歌

9月18日は 満州事変の日です

覚悟していでたつ兵も朝なゆふなにひとつ写象を持つにはあらず 斎藤茂吉

9月19日の短歌

9月19日は 正岡子規の忌日 子規忌です

くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨の降る

正岡子規の短歌代表作10首 写生を提唱

9月20日の短歌

9月20日は 中秋の名月の日です

月見ればちぢにものこそ悲しけれわが身一つの秋にはあらねど 大江千里

月を詠んだ和歌・名歌 万葉集と古今和歌集より

9月21日の短歌

9月21日は 宮沢賢治の忌日 賢治忌 です

しづみたる月の光はのこれども 踊のむれのもはやかなしき

宮沢賢治の短歌

9月22日の短歌

9月22日は 彼岸 です

音立てて茅がやなびける山のうへに秋の彼岸のひかり差し居り 斎藤茂吉

彼岸と秋分の日の短歌

9月23日の短歌

9月23日は 秋分、秋分の日 です

秋分の日の電車にて床にさす光とともに運ばれて行く 佐藤佐太郎

佐藤佐太郎の短歌代表作5首 「純粋短歌」の叙情

9月24日の短歌

9月24日は 畳の日 西郷隆盛忌 です

瓶にさす藤の花ぶさみじかければたたみの上にとどかざりけり 正岡子規

畳の短歌 

西郷隆盛の辞世の句の和歌「二つなき道にこの身を捨小舟波立たばとて風吹かばとて」

9月26日の短歌

9月26日は 風呂の日 です

春さむみ風呂あみ居れば家裏の竹のはやしを風わたるなり   古泉千樫

9月27日の短歌

9月27日は 藤原定家の新暦での忌日です (旧暦は 仁治2年8月20日)

こぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くやもしほの身もこがれつつ 藤原定家

藤原定家の和歌一覧 代表作と有名な作品

9月29日の短歌

9月29日は本居宣長の 宣長忌 です。

辞世の句は

敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花 本居宣長

9月30日の短歌

9月30日は くるみの日 です

秋晴れの光となりて楽しくも実りに入らむ栗も胡桃も 斎藤茂吉

胡桃を詠んだ短歌

 

以上、9月の和歌と短歌をご紹介しました。

秋は詩心をくすぐられる季節、外を眺めて秋の気配を見つけたら、ぜひ歌に詠んでみてくださいね。




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